社畜バンドマンのうらっかわ

社会人になって完全趣味と割り切ったバンド活動をどう面白くしていくか、どんな風に切り盛りしているかの、活動事情をお届けします。

高級楽器の購入で起こる金銭感覚の変化

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“高級品”
なんともいい響きですね。

ファッションでも、家電製品でも、
高級品を使用していることで得られる満足感は
なににも代えがたい気持ちなんではないでしょうか?

もちろん、それは楽器にしても同じこと。
1万円くらいのギターよりも
50万円のビンテージギターを弾いたときの方が、
弾き心地にしても、奏でる音にしても、
なんだか気品にあふれ、幸せな気持ちになります。

まさにそれこそが“高級品の魔法”であり、
一般庶民の我々にとっては落とし穴。
バンドマンにとっては、奈落への入り口です。

巷では、よく“バンドマンは金がない”と言われており、
ライブでの収益が上がらないことや、
練習スタジオのレンタル代がかさむなど、
バンド運営が難しいことが、貧困の理由とされています。

しかし、実際はそうではありません。
世のバンドマンが貧困に嘆いている理由の多くは
“高級品の魔法”と、
それがもたらす心理状態のサイクルが諸悪の根源なのです。

本日は、楽器購入を通して、
バンドマンの金銭感覚がどうバグって行くかを見ていきましょう!

とりあえず楽器屋へ試奏に行く

例)この前のライブで対バンさんが使ってたESPのベースよかったな。
例)シングルコイルのギターも1本持っときたいなー。
みたいな、
購買意欲になる一歩前の気持ちって、
誰でも持っているのではないかと思います。

通常であれば、
ネットでよぉ〜く下調べをし、
その上で欲しい気持ちが変わらなければ購入。
といった流れがベターなものかと思いますが、
バンドマンのそれは少々異なります。

もちろん、バンドマンもネットで下調べはするのですが、
楽器の多くは一点物で、個体差が結構あります。
そのため、ネットでの情報は本当に参考程度にしかならず、
結局は楽器屋へ試奏に赴きます。

また、もっと単純に
「暇だし、楽器屋で色々弾かせてもらおう」
といった感じで、
リサーチも兼ねて超気軽に試奏へ出かける
なんてケースもありますね。

車の試乗みたいにハードルが高くなく、
家電の店頭サンプルよりも実践に近い形で試せちゃうところが、
この後の地獄を作るミソになってくるわけですね。

楽器屋店員とのコミュニケーション

楽器屋に到着し、気になった楽器の試奏を開始。
もちろん今回の目的はリサーチですので、
口頭で音のイメージを店員さんに伝え、別の物も試させてもらいます。

はっきり言って、店頭に出ている店員さんのコミュ力は異常です。
こんな面倒臭い客に対しても笑顔で対応してくれますし、
なにより、要望に沿った楽器を色々とチョイスしてくれます。
楽器屋店員さん素敵すぎッ!!

きっと、この簡易的に色々試せちゃう環境がゆえに
店員さんも慣れていらっしゃるんでしょうね。
楽器屋さんからしたら、
この手の客はもちろん、冷やかし客なんかの対応も日常茶飯事。
そして、当然まったく購買意欲のない客に対して
どうやって購買意欲を持たせるかに関しても・・・

ローンの組み方を覚える

「楽器屋の店員さんって本当に素敵!
要望通りの楽器をピックアップしてくれたのはもちろん、
知らなかったメーカーや、木材のことについても教えてくれる!
おまけに、“ローン”って制度も丁寧に解説してくれるなんて!!!」

リサーチ目的で来たはずなのに、
いつの間にか物欲が抑えられなくなっている、
なんてことしょっちゅうです。
そんな時に、
店員さんは甘い言葉で我々バンドマンを誘惑してきます。

「月8,000円くらいでも全然買えちゃうんですよ!
それに、例えばパチンコで勝ったとか、
臨時収入が入ったときとかに支払ったりすれば、
ローンなんてすぐ終わりますよ!
現に、僕も60万のビンテージギターをローンで買ったんですけど、
全然辛くなかったですねー!
それに、こちらのギター、かなり鳴りいいじゃないですか?
このクラスって中々入荷しないんですよね〜」
※当時20歳の私にとどめを刺した言葉です。

そんな感じの見事な畳み掛けで
気付けばローンの用紙に記入を進めていた。
なんて、シチュエーションがバンドマン界隈では
常に行われているわけなんですよ。

謎の高揚感

さて、ローンといえば聞こえはいいですが、
ド直球に言ってしまえば、“借金”を背負ったわけです。
しかしながら、胸に抱えた楽器の重みが
そんなこと気にならなほどの高揚感を与えてくれているはずです。

もちろん、新しい楽器を買ったことによる喜びもあるのですが、
決してそれだけではない
なんとも形容しがたい複雑な気持ちがあなたを包み込むはずです。
これは高級楽器を買ったとき独特の感覚なんじゃないかと、
私は考えています。

ともあれ、楽器を買ったからには早く弾きたいと思うことは至極当然。
速攻家路につく、あるいはその足でリハーサルスタジオへ向かいます。
そして、現在の自分の装備品と合わせて音を奏でることで、
初めて高級楽器を買ったんだなぁと実感できることでしょう。
このとき湧き上がる感情が、本当の喜びなのかもしれませんね。

周辺機器の充実を図りだす

どのジャンルでも、
1個高級品を買うと、他も同じグレードの物で揃えたくなってきますよね。

たとえば、バカラのグラスを買ったとしたら、
それに則したお皿も欲しくなったり、
ルイヴィトンのバッグを買ったら、
お財布もそれに則した物にしたくなったりと、
物欲が連鎖していくことは、よくあることなんじゃないかと思います。

これは楽器においても同じことでして、
高級ギターを買ったのなら、エフェクター類もそれなりのものを
高級スネアドラムを買ったなら、シンバル類も・・・
といった具合に、周辺機器のグレードアップをしたくなります。

そして、
「前回Leqtiqueのディストーション買ったから、今回はディレイにしようかな? Flashback X4 Delayって3万切るのか。これにしよう!」
といった感じで、高級楽器に合わせた高級周辺機器を買うことで、
1回3万クラスの出費に怯まない屈強な“散財メンタル”が完成されていきます。

ここまでくれば金銭感覚の崩壊を演出するための仕込みは完了です。
あとは機を待つだけです。

マンネリ化してくる

周辺機材の収集もそこそこ、
あの日に買った高級楽器も自分を構成する一部として、
今日も通常営業を続けています。
あることが当たりまえの生活になっているのです。

そうなってくると、心の底から物足りなさが湧き上がってくるはずです。

悲しいかな、人間という生き物は
無意識のうちに、自身の成功体験、過去の栄光にすがってしまいます。

あの日の高揚感をもう一度味わいたい——
そんな気持ちが、頭の中を巡りめぐってしまいます。

気付けば楽器屋に足を運ぶ自分がいて、
あの日と同じように笑顔の素敵な店員さんから
マイナーメーカーの新作楽器を紹介してもらっています。

ただ、あの日と違うのは、
40万の値札を見ても諦めなくなった精神と、
自分はローンの組み方を知っているということ。

そして・・・

さいごに

いかがでしたでしょうか?

どこかで我に返ってもおかしくはないはずなのですが、
なんでか一度高級品を購入してしまうと、
歯止めが利かなくなってしまいますよね。

まぁ、結果的に良い品が手に入って
生活に張り合いが出ていることは確かなので、
一概にはローンを組むな、なんて言えないところではありますが・・・
ホント「ご利用は計画的に」の一言に尽きますね(苦笑)

ともあれ、高級楽器を手に入れること自体はとても素晴らしいことですので、
皆さんもお財布と相談したうえで、
一度楽器屋さんに足を運んでみてはどうでしょうか?